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名を 中嶋定治(なかじまさだはる) と言う。
変な人である(笑)
諸星大二郎や一般的にはマニアックな方に分類される漫画や妖怪、そんな物が大好きなSSWであり、絵描きでもある。
放っておくと妖怪やおかしな物ばかり描いている変な人だ。

だが、彼の書く歌はとても柔らかだったり爽やかな空気感を持った旋律と切ない歌詞、そして熱い歌唱のその全てを引っ括めてとてもとても魅力的なのである。

そもそもの出会いはご本人とではなかった。

今年前半のベストディスクにも選出したアルバム『Lentment』の作者であり、中嶋氏と同じくSSWであり絵も描く ハナカタマサキ 氏。
そのハナカタ氏が出会いのキューピッドとなったのだ。

たまたまtwitterでハナカタ氏が、仲良しである中嶋氏のアルバム『マジカルストリーム』を、ジャケ写も付けてツイっていたのが始まりだった。

僕はそのジャケットに一目惚れしてしまったのだ。
もう、僕はそこにどんな音が詰め込まれているのか確かめる事さえせず、ソッコーでアルバムを注文していた。

それ程にこのアートワークに惚れ込んでしまっていたのである。
(因みに、このアートワークは中嶋氏の友だちである漫画家のサヌキナオヤ氏の手によるモノであり、中嶋氏本人の妖怪絵はブックレットに載っている。)
数日後手元に届いたアルバムを聴きながら、僕は直感でジャケ買いした自分の直感を褒め称える事となる。

基本的にテクノやエレクトロニカと言った打ち込み音楽を好んで聴く僕ではあるが、生のバンドサウンドなどが嫌いな訳ではない。

一聴して感じたのは、例えばムーンライダーズ系のメロディーラインを喚起させられる事。
コレはtwitterでもファーストインプレッションとして書いた事だが、僕はこのアルバムを聴いて、青山陽一氏がその昔やっていた(最近復活しましたっけ?)バンドであるグランドファーザーズを一番最初に思い出した。
ストレートなようであり、実はちょっと捻くれたポップセンスとでも言おうか、そう言ったモノを中嶋氏の紡ぐメロディーから感じたのである。
さらに言えば、曲調もさる事ながら、中嶋氏の歌い回しと言うかヴォーカルスタイルが青山氏のそれと近く聴こえたのだ。

例えば最近になってPVが制作され、そのなかなかにアブノーマルな世界観が話題となった佳曲「セミ」も、一筋縄ではいかない捻くれ具合を持ったメロディーラインを持っているにも拘らず、パッと聴くととても爽やかでポップなのである。
そう言った部分に、高野寛やくるり的なちょっと捻くれた、しかし抜群のセンスを感じるのだ。

実を言えばこのアルバム、リリース自体は昨年、2013年になる。
そして、このアルバムに収録された全ての楽曲は、元々中嶋氏が組んでいたアコースティックバンド“ぺろりんちょ”としてのレパートリーだったと言う。
今回のアルバムを制作する為にバンドアレンジを施し、リズム隊を加え再構築した、謂わばリアレンジアルバムなのである。

僕は残念ながらこの ぺろりんちょ を知らない。
中嶋氏がそこでどんなアレンジでこれらの楽曲を演奏して表現していたのか、まるで分からない。

しかし、だ。

断言しよう。

このアルバム『マジカルストリーム』はとても良く出来たポップスアルバムであり、ポップロックアルバムである。
いや、正しくは良質なポップスの皮を被ったストレンジポップだ。
そんな一度ハマると病みつきになる中嶋定治の世界に、ぜひ足を踏み入れてみて欲しい。

もしも気になったなら、このフリーDLのベスト盤とでも言える作品集を聴いてみて欲しい。
アルバムからの楽曲や弾き語りライヴからの音源など、中嶋氏の世界の断片を知るには持って来いの作品集となっている。

中嶋定治サンプラー2014『馬CD』
http://sadaparadise.com/blog/20140327news/

パパヤん([電脳戯話/COPY LABEL]仙台) ⇒ http://d.hatena.ne.jp/papaya_n/ 2014-09-17投稿記事より